So-net無料ブログ作成
検索選択

ショートストーリー「真相」

中継です。
一週間前に起こった「マイクロバス転落事故」で唯一の生存者となったSさんの意識が戻ったということで、まもなくA病院会議室よりSさん本人による会見が開かれます。
会見に先だち、Sさんのプロフィールを簡単に紹介しておきます。Z大学文学部国文学科二年在学中、趣味は読書と旅行だそうです。今回の「ちょっと山に行ってみようツアー」には1人で参加したもようです。
さて、会見が始まりました。
「Sさん、あなたはバスの中でどこの席に座られていたのですか?」
「運転席のすぐ後ろです。通路側です。」
「運転手が酒に酔っていたり、朦朧としていた感じはしませんでしたか?」
「いえ、全く。隣の人と暑いですねぇと話したら、クーラーを入れますねと言ってくれて、今度は僕の通路挟んで隣の人がちょっと寒いと言ったら、ガイドさんに毛布を出すように指示していました。まわりにとても気を配っていましたよ。朦朧となんて、とても。」
「そうですか?事故に遭う直前にパーキングで休憩をしたそうですが、その時にお酒を飲んだ可能性はありませんか?」
「いえ。パーキングの休憩時間はずっと一緒にいましたから。僕と隣の席のTさんが車内で話していた本の話に興味があったらしく、バスを降りたら運転手さんから自分も読書が好きで・・・と話し掛けてきました。それから、トイレに行って、えーと、無料給湯器のお茶を飲みました。あっ、僕とTさんはほうじ茶だったけど、運転手さんは緑茶を飲みました。まさか・・・緑茶だと思わせておいて、実は・・・お酒だったんですかね。」
「あ、そうですかぁ。分かりました。休憩時間にはお酒は飲んでいないということですね。では、事故直前の話をしてもらえませんか?」
「はい。でも、僕、あまり外とか見ていなかったので、よく分かりませんが・・・。」
「Sさんが何をしていたかだけでも構いませんので・・・。」
「はい。僕は・・・それまで隣のTさんと話していたのですが、突然Tさんが本を読みだしたんです。あ、Tさんはどこかの雑誌ライターだって言ってました。{森鴎外}という人の本です。鴎(カモメ)に外で{おうがい}って読むんです。知ってました?」
「はぁ?えぇ、まぁ。」
「で、Tさんがあまりに熱心に、蛍光ペンで線を引きながら、その人の本を読んでいるので、聞いてみたんです。」
「・・・。」
「Tさんは仕事だと言ってました。次の号で特集をする予定だから、って。」
「・・・。」
「その時です。バスが大きく傾き、ガードレールを突き破り・・・、そこまでしか覚えていません。」
「そうですか。それが事故前の最後の会話だったのですね。」
「・・・・・・・。あ、違います。思い出しました。僕、もう一言しゃべりました。{森鴎外との対談もあるんですか?}と。」
=============================
「小説現代」応募・落選作です。
掲載作品を書かれているサイトーさんのブログは下記をクリックしてください。
http://takeaction.blog.so-net.ne.jp/2012-06-22-1


Sweet II

Sweet II

  • アーティスト: 古賀勝哉,京田誠一
  • 出版社/メーカー: ニュートーラス
  • 発売日: 1995/11/29
  • メディア: CD


同タイトル「真相」という歌が含まれている井上昌己さんのアルバムですが、内容は全く全く違います。

nice!(2)  コメント(6)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 6

海野久実

これはすっごい考え落ちですね。
最後の部分を3回読みなおしてわかりました。
運転手、ずっこけたんですね。

落選したのは、意識を取り戻した主人公がそのままマスコミのインタビューを受けるなんて事が考えられないからでしょうか?
まず、警察の事情聴取があるでしょうからね。
その辺が不自然だという事かもしれません。
警察の事情聴取で、この森鴎外の件が話される。
しかし警察はそれに気がつかないが、読者は気が付いていると言う風に持っていくか。
または事情聴取をしても警察は事故の原因が突き止められない。
その後に記者会見がある。
と言う感じの方がいいのかな。
by 海野久実 (2012-06-24 17:24) 

かよ湖

海野さんが3回も読まないと分からないオチではダメダメですね。きっと気付かない人は「気付かない」という事ですからね。サイトーさんを見習って頑張らなくては!
そうかぁ、警察の事情聴取がないのも現実には不自然ですよね。不自然の積み重ねで、読者を置いてきてしまう。
なるほど。今後の課題です。
by かよ湖 (2012-06-25 02:50) 

リンさん

ユニークですね。
国文学を学んでいる学生が、森鴎外を知らないとは!!
ありえない話じゃないですよ、これは(笑)
運転手さんもズルってなっちゃたんですね。

面白かったですが、やっぱりちょっとわかりずらいかもしれませんね。
どこかで、「ハンドルを誤まるようなショッキングなことがあったのでしょうか?思い当たることはないですか?」
というようなセリフがあったら良かったかも^^
by リンさん (2012-06-25 18:48) 

かよ湖

やっぱり分かりずらかったですか?
リンさんの1文が入れば、よかったかも、ですね。

最近は大学や学部を選ばなければ、どこかには行けそうですからね。あえて(アルファベット最後の)Z大学にしました。
でも、日本人なら「森鴎外」くらいは知っていてほしいですね。
by かよ湖 (2012-06-26 23:18) 

サイトー

ぼくのブログを紹介してくださりありがとうございます。
作品の感想ですが、みなさんもご指摘されているように、分かりにくいかなあ……という気がします。
運転中に乗客と話しているというのがちょっと考えにくいですし。
ぼくならですが、休憩中にTが「しんおう そと」についてひたすら運転手に話している。
休憩後のSは黙々と運転するけど、いきなり「モリ オウガイだ!」と叫んで事故になる……という感じでどうでしょうか?
by サイトー (2012-06-27 05:23) 

かよ湖

サイトーさん、お返事遅くなりすみません。。。
感想ありがとうございます。オチも分かりづらければ、設定も分かりづらかったようですね。
私の中では、まじめで気配りのできる運転手だったため、乗客の言葉に耳を傾けていたら・・・ズルッ!という感じだったのですが・・・。
by かよ湖 (2012-07-04 01:56) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。